DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007/11/28 ¥1,481
 物語には必ず出会いがある。男女の出会いについて「ひとめぼれなんてありえないと思ってたけど」と歌ったのは宇多田ヒカルだったか。この映画を見て、このフレーズを思い出した。
 ヒロインである女性は、短期記憶が一日しかもたない。それでも男は必死に彼女の記憶、いや、心に残ろうとする。毎日、いろんな形で彼らの「はじめての」出会いが起こっていく。あるときはロマンティックに、あるときはロマンのかけらもなく。なんてったって、毎日が初対面なのである。「ひとめぼれなんてありえない」のか、出会った瞬間恋に落ちる日もあれば、まったく逆の日もある。そんな「はじめて」を重ねながら彼らの日常は過ぎていく。そこでは、何も変わらないようでいて、確実に何かが変わっていっている。
 そんな彼らの姿を見ていると、はたと気が付く。私たちも、毎日新しい「私」や「あなた」になって互いの目の前に現れていることに。今日の「私」は昨日の「私」の未来。今日の「私」は昨日の「私」より新しい「私」。もっと言えば、1秒前の「私」は、今現在の「私」より古い「私」なのだ。
 更に言うならば、「あなた」が発した声は、僅かな時間のズレを経て「私」の耳に入るまでに既に古い物になっている。今「私」が見る「あなた」の姿は至極僅かに古い「あなた」なのだ。私たちは感じあうことはできない。私たちは永遠に一つにはなれないのだ。せいぜい、出会えて、今ここにいるあなたを思うことしか「私」にはできない。そうしてしか繋がることはできない。そんな、僅かにズレた出会いを繰り返しながら、ひとは関係を紡いでいく。
 もしあの時、違う形で出会っていたら。今、「私」は「あなた」と違う関係になっていただろうか。それは誰にも分からない。しかしだからこそ、今ここにいる「あなた」を大切に思うことが何より大事で、ひとはそれを「愛」と呼ぶのだ。

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